夜爪を切ると、親の死に目に会えないと言い伝えがある
そんな迷信かもしれない話を八戒から聞いたことがある
別に信じている訳じゃない
こう見えても、俺はそんなに童話に心躍らす子どものままではない
けれど、こんな俺の場合、適用されるのか。
それが疑問である。
その前に、俺の場合。
親とは、一体誰に当たるのだろうか。
一番しっくり来るあの人は、俺の太陽は、もう・・・・
『 ユメ 』
少し息の荒くなった俺を、誰かが優しく抱きしめた。
若干の呼吸困難に陥った俺を現実に引き寄せた彼は、不愉快そうな顔つきでこちらを見やる。
ああ、俺の太陽は、こんなに捻くれて。
悲しさを胸に、何とか彼に手を伸ばす。
一瞬彼の眉根が深くなった気がしたが、彼は何も言わず俺の手を取った。
いつもより優しく、いつもより少し体温が高い。
自分から伸ばした事は解っているが、彼が求めているような気がしたのだ。
暑ければ、この手を取らなければいいと思うのも事実だ。
しかし、この唸るような暑さの中、彼は俺の手を離さない。
いつもそう言えばそうだった。
俺が決まって何かに迷ったり、悩んだり。
今日のように夢にうなされたりした時。
決まって彼は俺を優しく抱きしめる。
そして、少し不愉快そうな顔で俺を見るのだ。
今にも泣き出しそうな瞳をして。
だから俺は、いつも差し出してしまうのだろう。
頼りないはずの自分の全てを。
暫くして、静かな寝息が直ぐ傍から聞こえてきた。
三蔵はこうして、いつも自分だけ幸せそうな寝顔で先に眠りについてしまう。
だけど、なんだかその寝顔を見るたび。
俺は幸せな夢に誘われるのだ。
三蔵の手を握ったまま。
二人よりそって、朝日が昇りきるまで眠った。
いかがだったでしょうか。
今回は、ショートストーリーにてお届けです。
前世の記憶などない悟空が、何かに迷い夢を見るとき。
さり気なく三蔵が悟空を今の現実世界に留めさせるといいますか。
今の悟空の太陽は紛れもなく三蔵なんだ、という感じで感じて頂ければ(笑)
もうそろそろ前世の話が終わりを見せようとしている時。
自分の中で切ない気持ちがあるわけなんですが。
現世は現世で幸せになって欲しいという思いから、今回のこのような感じで。
とりあえず。
どこまで行っても二人は馬鹿ッポーということで(笑)
極甘ッぷりが見え隠れしていただければ幸いです(お前のサジ加減だ)
それでは。
2008・08・17