仕草。


夜、ふと目が覚めた。
さっきまで赤く照らされていた室内が、今は黒一色。
俺は、何気なく天井を見上げる。
まるでここは鳥籠のようで、そう考えると急に息苦しくも感じる。
しかし、自分の呼吸の合間に微かに聞こえるリズム。

自分と違う呼吸リズムが聞こえる。
微かに届く吐息。

俺の中で、大きく育つ存在感。
いつも思う。
こんな時だけ君を意識させられる。

隣で眠る、君。
俺の隣にいてくれる君。

俺は君の方に体を向ける。
君は、俺の方を向いてすやすやと寝息を立てる。
昼間とは違う顔。
子供のような無邪気な寝顔。
しかし、自分の鼓動が速まるのを感じた。

俺は、彼の寝顔に欲情している。

自分でも、情けないと思いながらそれでも我慢が効かない。

俺は自嘲的に笑った。

そして隣に手を伸ばす。
「八戒・・・・。起きてる?」
すると、ゆっくり彼の目が開いた。
「ええ、誰かが隣でもぞもぞするもんですから。」
そして、彼は優しく笑う。だから釣られるように熱を帯びる俺の身体。
「・・・あのさぁ、あの・・・・」
覗き込むようにして八戒を窺い見る。
八戒は俺の手を捕り、俺の目を見つめながら口付けをした。
「・・・・・!?」
いきなりの口づけに、俺は面食らう。
そして、何度か瞬きを繰り返し、また八戒を見つめた。
「貴方に、僕は欲情しました。」
いつも以上に真剣な、自分を見つめる八戒の艶を帯びた視線が、俺を捕えて放さない。
先に心を取り乱していたのは俺だったはずなのに。
いつも俺は、八戒に先手を打たれる。そして、それに俺は決して抗えない。
「八・・・・戒・・・・」
俺が名前を呟くと、俺の手を掴んだ八戒の手に力が込められた。
俺の身体が、微かにハネル。
それは、俺の心と身体が、この先を心待ちにしているから。心から期待しているから。

俺は望んでいる。

精神と肉体。その両方で、他の誰でもなく、八戒のことを。
これは、心の底からの渇望。
遠くない未来に、期待を馳せて俺は、大きく息を呑む。

すると、目の前の八戒がクスリと艶かしく微笑んだ。
そして、その仕草に俺は余計に鼓動を高鳴らせてしまう。
これではどこぞの夢見る少女じゃないか、そう自分の中で毒づいたところで、
熱を帯びた身体は簡単に静まらない。

俺は、暖かな布団の中に潜む手を引き出し、遅すぎる攻撃を仕掛ける。
八戒の唇の辺りをワザと探るように、そしてゆっくりと輪郭に合わせて指を這わせる。
それはまるで拙い仕草。
そこに稚拙な落書きのような隙が見える気がした。

仕掛けたのは、俺。



組み敷かれたのは、いつも俺。



俺は熱に霞んだ視界の中で、八戒の妖艶に余裕を噛み殺した様な微笑を見た。

やっぱり俺は、この手を離せない。

そして、俺はそのまま熱を受け入れた。




















どうも。今回はだいぶ短めに。
何となく、自分でこういうのを打っていて、ちゃんと伝わってるかな?
とか、少し照れくさいな、とか
お決まりのことをいつも以上に感じてしまいました(笑)
版権ものに限らず、こういう話を書くときはいつも以上に緊張する気がします。
もちろん、普通の小説特にシリアス物なんかは、
臨場感や緊迫感などを表現しないといけませんので緊張はするんですが。
なんか、それとは別物です。

特に、俊貴として書く物語は、その場の緊張感とか
愛情の表現などの表記が多くなるパターンが多くて。
その上、俊貴としてのものはいつもどおり(笑)最後まで書かずに
におわす程度の雰囲気のものが多いんです。
なので、その中で上手く伝えられるように、と毎回考えるんですよ。

で、今回の話の内容についてですが。
これは、端的にいうと夜ふと目を覚ましたら(悟浄なんですが)
寂しさに胸を押し潰されそうな感覚に陥ってしまうんですが、
横で寝ている八戒の存在で安心してなおかつ心ときめかせるというお話なんです(笑)
そういう感じに幸せ間を漂いつつ感じて頂けると幸いです。



2006/01/12




これは、以前別HPにて俊貴名義で掲載したものです。
俊貴名義でHPを新たに移転しようかとも思ったのですが、結構めんどくさがりが祟ったのか載せちゃいました。
とりあえず、そんなに年齢を気にすべき内容ではないな(というか、書けない)ということなので
もう一緒にUPすることに決めました。
もしかしたら、一部別館なんかを作るかもしれませんが、その時はその時ということで。

でも、ちょっと恥ずかしい。ので今、ちょっと後悔(笑)
これからも、もしかしたら俊貴名義で発言するかもしれませんが、ご了承くださいませ。
単なる、テレでシャイなんだなと思ってください(それも十分恥ずかしい)